コーチングのジレンマ

東海林祐子 著(TOKAIRIN Yuko)
慶應義塾大学総合政策学部専任講師


B5判 168ページ 定価2,000円+税 (品切)
ISBN-13: 9784938335762
2013年6月21日発売

高校男子ハンドボール部を女性指導者として初めて全国優勝に導いた著者だが、当初は情熱が空回り、コートに行っても選手がいないことすらあった。指導者と選手、選手間など、多くのジレンマを抱えていた。その解決の道を振り返り、ゲーム理論の「囚人のジレンマ」モデルをベースに、コーチングの新しいモデルつくりを試みた一冊。スポーツ団体、NGO、企業の指導者、選手、従業員への取材も含め、「コーチングのジレンマ」とその解決策を示す。体罰問題で揺れる指導者論でもある。『スポーツコミュニケーション』の続編。



目次
はじめに

 01章 スポーツ組織とコーチングのジレンマ
  01 コーチと選手との関係はヒエラルキーであるという思い込み
  02 ぶれるコーチング
  03 ジレンマが発生しなかったコーチング初期
  04 「選手に逃げられるかも」、「傷つくかも」というジレンマを抱えながらのコーチング

 02章 「囚人のジレンマ」モデルを適用した選手間におけるジレンマとコーチの役割
  01 選手が抱く選手間でのジレンマ
  02 選手間にあるジレンマを「囚人のジレンマ」モデルを適用して
  02 複雑な選手の心理的構造を理解する
  03 チームスポーツは「協力」行動が前提という思い込みが本質を見えづらくする
  04 コーチによる「外からの働きかけ」によるジレンマの解決

 03章 コーチと選手の間で起こるジレンマ
  01 ヒエラルキーの権力を行使したがゆえに出てくる1回限りのジレンマ
  02 コーチングのジレンマとその獲得過程
  03 放任(自由)のコーチングはコーチングの本質からはずれる
  04 成功体験やプライドがヒエラルキーを行使させる
  05 限られた時間と指導方法に関するジレンマ
  06 立ち位置に迷うコーチング
  07 限定的に捉えてしまったヒエラルキーの権力の行使

 04章 協力関係を引き出し選手のジレンマを解決するコーチング
  01 「権限の介入コーチング」から「自発的な協力関係を醸成するコーチングへ」
  02 全国制覇に向けた試行錯誤のコーチング
  03 選手間におけるジレンマの解決の事例~上級生と下級生の間にあるジレンマのしくみ

 05章 コーチとチームサポートスタッフの関係で起こるジレンマ
  01 協力関係を築くことができないコーチングスタッフ
  02 ジレンマを解決する二人三脚のコーチング
  03 スタッフとの協力関係の導き方
  04 審判とのジレンマから学ぶ
  05 理不尽な体験から得た教訓
  06 制度の導入によるジレンマの解決

 06章 コーチングに不可欠なコーチのマネージメントスキル
  01 遠慮がちなソーシャル・キャピタルと自発的な協力関係を醸成するコーチングの関係
  02 コーチの目が届く範囲には限界がある
  03 チーム外でのソーシャル・キャピタルの高め方 教員間の協力関係の引き出し方
  04 担任とコーチとのジレンマに左右される環境ではコミュニティのちからは引き出せない
  05 保護者同士のジレンマを解決する
  06 クラブ日誌で保護者に安心してもらいジレンマを解決する
  06 遠慮がちなソーシャルキャピタルを高める
  07 選手を育成する環境のすべてを俯瞰してソーシャル・キャピタルを高める
  08 自分の経験が積み重なっていることに自信を取り戻すサッカー日記の事例
  09 サッカー日記の記述の深さがサッカーの興味を引き出す

 07章 スポーツを通じたライフスキルでジレンマを乗り越える
  01 スポーツを通じたライフスキルについて
  02 アスリートのためのライフスキルを参考にジレンマの解決を学ぶ
  03 「礼儀・マナー」を生かしたライフスキル
  04 「最善の努力」を引き出すための目標設定のライフスキル
  05 選手自ら目標を設定する支援をする
  06 見通しを持つコーチング
  07 コーチのライフスキル獲得のための練習の必要性
  08 協力関係を引き出せるコーチのライフスキルとコーチングの心得

 08章 トップを目指すアスリートのジレンマとその解決に向けて
  01 トップを目指すアスリートのジレンマと競技力向上の関係
  02 ジレンマとライフスキルの関係
  03 ライフスキルを指標化してコーチとしてのあり方を考える

 09章 教育現場で見られるジレンマとその解決に向けた取り組み
  事例1 大学体育授業での事例
  事例2 NPOスマイルクラブ(運動が苦手な子どもの教室)
  事例3 山鹿市立山鹿中学校の堀田浩一郎校長が解決を目指す生徒間のジレンマ

 10章 企業で見られるジレンマとその解決に向けて
  01 企業組織における上司と部下のジレンマの解明
  02 上司と部下の関係で悩む原因
  03 2つの事例を通じて

 11章 クラブ組織で選手のジレンマを解決する──人が集まるクラブのしくみ
  01 運動部活動からクラブ化への転身 豊かなスポーツライフの育成
  02 学内イベントで養われる「当事者意識」はスポーツに不可欠な「自立」につながる
  03 プレーヤーの意思決定を促す働きかけ
  04 スポーツの多様なニーズ「する」「みる」「ささえる」をクラブで育成
  05 ライフスキルは自分たちの手でつくり上げるスポーツイベントから大いに獲得される
  06 「DUOリーグ」の立ち上げ 補欠ゼロのサッカーリーグが選手間のジレンマを解決する
  07 技術の向上だけでは豊かなスポーツライフを育成することはできない
  08 地域の大事な部分が抜け落ちたままのシステム
  09 スポーツを豊かにする理念と競技志向のジレンマ
  10 選手間のジレンマを解決に導くことが感謝の気持ちに変わり、ささえる力に変わる
  11 部活動自体の改革の必要性
  12 スポーツを豊かにしながらどうアスリートを育成していくのか
  13 心をつくる

最終章 コーチを成長させるコーチングのジレンマ──新しいコーチングの提案
  01 コーチングモデルの提案
  02 ジレンマに向き合う勇気と学び続ける姿勢がコーチングの新たな一歩につながる

コラム ゲーム理論とその周辺のいくつかの理論モデル 金子郁容

あとがき





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 (はじめに、1章)*注1



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