9 健康における基本的な栄養学的要因 (プレビュー版 2017-05-06)  Marie Spano, MS, RD  >本章を終えると  ・いつ選手を適切な情報源や医師、スポーツ栄養士へと問い合わせ・紹介するかを知ることができる。  ・競技選手のタンパク質、炭水化物、脂肪の推奨摂取量を決定する方法を解説することができる。  ・疾病予防や健康全般のための推奨摂取量を列挙することができる。  ・異なる年齢グループやシナリオのための水分および電解質補給のガイドラインを列挙することができ、選手らが個別化された水分補給計画を立てる手助けをすることができる。  よい栄養によって、選手に一般的な健康、成長、発達、筋組織の修復および構築に必要不可欠な栄養とともに、練習や試合に必要となるエネルギー、また心理的な集中の維持がもたらされる。選手の特異的なニーズに合わせた栄養計画は、ケガや病気のリスクを低下させ、トレーニング適応(トレーニングに由来する改善)を最大化するのを手助けし、選手がパフォーマンス目標に到達するのを助ける。本章では、パフォーマンスを促進する栄養の実践についての科学的根拠に注目し、読者がスポーツ栄養科学を現実生活のシナリオに適用するうえで助けとなる示唆を提供する。  インターネットや印刷物、口伝えによる間違った、あるいは矛盾する大量の栄養アドバイスは、選手を非常に混乱させる(185)。加えて、各アスリートの栄養ニーズは、年齢や性別をマッチさせた座業中心の比較対象とは異なっており、これはその競技の生理的需要のためである。一般公衆のためにつくられた栄養ガイドラインは、必ずしも選手に適用できるわけではない。なぜなら、各選手の栄養ニーズは多くの要因(年齢、身体のサイズと体組成、性別、遺伝、環境的トレーニング条件、ケガ、医学的栄養ニーズ、トレーニングの継続時間や頻度、強度)によって決まり、必要な栄養は、たとえ同じポジションであったとしても選手間で大きく異なる。そして最後に、栄養は複雑であること、また科学は継続的に発展していることから、ストレングス&コンディショニング専門職にとって、基本的な栄養の知識をもつことに加え、選手に最新の科学に基づく個別化された栄養アドバイスを行うために問い合わせ(照会)することができる栄養の専門家のリストを用意しておくことは重要である。 スポーツ栄養の専門職の役割  スポーツ栄養は複雑で、学際的分野であり、アスレティックトレーナーやストレングス&コンディショニング専門職、医師、運動科学者、食事提供者の間で、栄養についての知識の程度は異なっている。選手育成を担うスタッフは、栄養教育とスタッフのメンバーの知識、提供された栄養情報、栄養実践に関する州のライセンス関連法令に基づいて概要を得なければならない。  すべてのスポーツ栄養の専門職は、基本的な栄養についての質問(たとえば、「健康的な軽食のアイデアは?」)に答えられるべきである。しかしながら、複雑な栄養問題を持つ選手は、適切なリソース、チームドクターやスポーツ栄養士へ問い合わせるべきである。チームドクターは、選手の医学的ケアの監督に責任を持つが、スポーツ栄養士は、個別化された食事アドバイスを提供することに責任を持つ。スポーツ栄養士は、スポーツ栄養における特異的な教育を受け、経験を有する登録栄養士(登録栄養士とも呼ばれる)である。スポーツ栄養・食事学会(AND)のスポーツ栄養スペシャリスト(CSSD)の資格は、スポーツ栄養の分野における専門性が、他の栄養士と比較して優れた栄養士であることを認定している(カコミ欄を参照)。スポーツ栄養士の中には、補完的なスキルを持っていたり、トレーニングを受けているものがソーシャルワーカーやアスレティックトレーナー、シェフになっている場合があり、総合的なスポーツ栄養についてのプログラムではフルタイムでの注意が求められる。したがって、これらの2番目のスキルは、1人が2つの明確に別れた職務を行おうとするというよりむしろ、スポーツ栄養の知識を補完するものである。そして最後に、より高いレベルの職務を持つスポーツ栄養士は、一般的に修士号や博士号(PhD)を有するスポーツ栄養士である。スポーツ栄養士は、選手がプレート(皿)とパフォーマンスの間をつなげるのを手助けすることができる。  時折、医師やスポーツ栄養士は、摂食障害や栄養失調、糖尿病などの特異的な疾患を持つ選手を手助けするために一緒に働くことがある。選手の栄養的および医学的情報は総合的なケアを提供するために育成あるいはコーチングスタッフ、家族の間で共有されることがあり、選手の保護された健康情報を取り扱う際、米国においてはすべてのスタッフがHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)のガイドラインに従うべきである。  スポーツ栄養コーチ(sports nutrition coach)は、登録栄養士ではないが、栄養と運動科学についての基本的なトレーニングを受けた専門職である。たとえば、ストレングス&コンディショニング専門職は、スポーツ栄養コーチとして行動することができ、基本的な栄養教育と示唆を提供することができる。食事あるいは栄養が、治療あるいは医学的症状の管理に用いられるような、より複雑な状況(栄養失調を含む)においては、医学的栄養療法を必要とし、その役割はスポーツ栄養士が担う。スポーツ栄養コーチは、スポーツ栄養の資格認定を受けることで、追加的な教育を受けることができるだろう。たとえば、米国運動評議会(ACE)では、パーソナルトレーナーや健康運動のコーチ、グループフットネスインストラクター、ヘルスケア専門職向けにデザインされた、フィットネス栄養スペシャリスト認定を行っている。また、国際スポーツ栄養学会(ISSN)のスポーツ栄養スペシャリスト認定資格(Sports Nutrition Specialist Certification)は、四年制大学を卒業していないパーソナルトレーナーやフィットネス専門職向けに受験に際して高校卒業を要件としている。ISSNには、認定スポーツ栄養士(CISSN)の資格もあり、四年制の大学学部卒(または現在運動科学や栄養、関連分野を選考する学生であること)を必要とし、これは選手や活動的な人とともに働く健康、フィットネス、医学的専門職を想定している。  より高度な学位を持つスポーツ栄養士は、スポーツ栄養産業で働く、あるいはスポーツ栄養分野で研究を行い、したがって特定のトピックの文献について議論することができる。高度な学位を持つスポーツ栄養士は、スポーツ栄養の資格を取得することを選ぶかもしれない。選択肢の1つが、IOC(国際オリンピック委員会)のスポーツ栄養のディプロマである。この2年間のプログラムにはコースワークやセミナー、チュートリアル、実験室での実践的ワークが含まれる。IOCは、このコースに興味を持つ学生は、栄養あるいは食事、生物科学(生化学や生理学、スポーツ科学を含む)の学位を持っていることが典型的であると述べている。  すべてのスポーツ栄養専門職は、栄養ライセンスに関する州法に従うべきである。この州法は州ごとに異なり、どのような人が個別化された栄養カウンセリングや医学的栄養療法の提供を許可されるかについて特定している。たとえば、ルイジアナ州では、一般的な栄養教育は、その情報が一般的で、正確か、また個別化(特定の人の食事ニーズに基づく)されていないかどうかといったさまざまな基準が定められている。しかしながら、栄養評価とカウンセリングを行うことができるのはライセンスを持つ栄養士のみである。栄養カウンセリングとは、「適切な食品および栄養素摂取についての特別なニーズを持つ人のための、栄養評価に基づく健康や文化的および社会経済的、機能的、心理学的要素を考慮した個別指導の提供である」と定義される。「また栄養カウンセリングには、以下のアドバイスが含まれることがある。すなわち、食事における栄養素の増減、食事のタイミングや量、内容構成、割合の変化、食品の歯ごたえの修正や、極端な例では提供経路の変更である」(3)。  栄養および運動科学の教育をほとんど受けていない(あるいは最低限の教育のみ)、正式なトレーニングを受けていない多くの人たちは、自分自身をスポーツ栄養士であるかのように呼ぶ。スポーツ栄養の情報、あるいは個別の食事アドバイスを提供する人の称号がどのようなものであっても、ストレングス&コンディショニング専門職はその人の受けた教育(カリキュラムを含む)やそれまでの職歴(とくにその人の日々の責務)、スポーツ栄養の知識・経験年数を見極めるべきである。  >経験を積んだスポーツ栄養士は、選手がプレート(皿)とパフォーマンスの間をつなげるのを手助けする。彼らはスポーツ栄養についての高度な知識やスキル、専門性を持っている。  栄養コーチングの最初の段階は、選手の目標を定義し、コーチの目標を特定することである(したがって、これらの2つは異なることもある)。その後、ストレングス&コンディショニング専門職がニーズ分析を行うのと同様に、スポーツ栄養士は選手の食事や、個別の食事の特性(文化的および宗教的考慮事項を含む)、調理スキル、食品へのアクセス、経済的制約、賢明な食事の妨げとなるもの、サプリメント使用、体重および体組成の履歴、既往歴、トレーニングプログラム、ケガについて詳細にみる。それから、スポーツ栄養士は選手と共に、ライフスタイルと好みに合う、以下を含む計画をつくり上げる。(1)適切なカロリーレベル、(2)推奨量の主要栄養素と微量栄養素、(3)適切な水分と電解質、(4)栄養不足を修正し、潜在的な栄養不足を満たし、トレーニング目標に合致させるのに必要なサプリメント。 標準的な栄養ガイドライン  一般的な栄養情報のために、ストレングス&コンディショニング専門職は、マイプレートという食事ガイドシステムを選手に参照してもらいたいと考えるだろう。これは、米国農務省が2010食事ガイドラインをもとに作成した、消費者がよりよい食品の選択をする手助けをするものである(98)。マイプレートは、食事における盛り付けに基づいた5つの食品群を示すアイコンである(図9.1)。 マイプレート  マイプレート(MyPlate)に関する情報は、www.choosemyplate.gov で得られる。基本的なガイドラインはマイプレートのアイコンで示されており、対応する教材は普遍的であるが、これらには表9.1および表9.2に示すように年齢や性別に基づく、中程度の身体活動が30分未満であることがほとんど毎日である人々のためのカロリーガイドラインや、フルーツや穀物、タンパク質の割合についての推奨、油脂の許容量が含まれる。身体活動がより多い人は、特異的な食事ニーズに合うようにガイドラインを調整すべきである(136)。また、油脂は食品群ではないが、必須脂肪酸やビタミンEPAといった栄養素を含んでいる。したがって、油脂については一日許容量が定められている。  マイプレートは考慮すべき出発点であり、選手が自らの食事を評価するのに用いることができる。一般的に、もし食事で各食品群からさまざまな食品を使うなら、適切な量のビタミンやミネラルを含む可能性が高くなる。しかしながら、ある1つのグループの食品を全く摂取しなかった場合は、特定の栄養素が欠乏してしまう可能性がある。たとえば、食事から乳製品を除外する選手は、カルシウムやカリウム、ビタミンD(栄養強化された牛乳やヨーグルト)の栄養必要量を満たすのが困難かもしれない。カルシウムを添加した非乳製品の代替食品によってカルシウムの必要量を満たすのを助けることができるかもしれないが、これらは栄養的に乳製品と等価ではないため、ほかの栄養素が不足するかもしれない(46)。動物性食品と魚を除外する人は、ビタミンB12の必要量を満たすことができないかもしれない(ビタミンB12は、肉、鶏肉などの家禽類、魚、卵、乳製品に含まれるが、朝食シリアルや非乳製品の代替食品、肉の代替食品、ニュートリショナルイーストにはビタミンB12が添加されている)。したがって、食品群を除外する人は、健康およびパフォーマンスにおいて求められる栄養必要量を満たすのを確実なものとするために、適切な代替食や代替となる組み合わせをスポーツ栄養士とともに見つけるべきである。  同じグループ内の食品の栄養素の成分は類似しており、お互いに交換可能であると考えられる。しかしながら、各グループ内でさまざまな食品を摂取すべきである。たとえば、オレンジやリンゴ、西洋ナシを1つずつ食べることで、リンゴを3つ食べるよりも、より広い範囲の必須栄養素がまかなわれることになる。各食品グループから多様な食品を摂ることは、主要栄養素(糖質、タンパク質、脂質)および微量栄養素(ビタミンとミネラル)の必要量をより満たせるようになる。  マイプレートのウェブサイトのスーパートラッカー(SuperTracker)の項では、カロリーの必要量に基づく食事例とともに、エンプティカロリーや、フードラベル(食品成分表示)の情報も含まれている。ここでは、どれくらいの食事を摂るかを計算し、食事や身体活動、体重を記録することもできる。 食事摂取基準  選手を食品を食べるのであって、個別の栄養素を摂取するのではないため、食事摂取基準では特定の食品の選択について示されている。しかしながら、食事の推奨をするうえで、選手の栄養所要量についての理解も重要である。食事摂取基準(DRI; Dietary Reference Intake)は、米国食品・栄養委員会や米国医学会、米国科学アカデミーによって作成され、健康的な人のために食事を計画するときに用いられる、完全な栄養摂取の基準である。食事摂取基準は、主要栄養素や微量栄養素、電解質、水が列挙されている(68, 70, 72, 142, 169)。食事摂取基準は、多くの栄養摂取と慢性疾患減少についての文献に基づいており、単に食事の欠乏を予防するものではない(36)。栄養摂取は日によってかなり変動するため、食事摂取基準はある人の通常の食事摂取に適用される。したがって、スポーツ栄養士がある人の栄養摂取を評価する場合、各栄養素の1回あたりの平均摂取量を得るために数日分の栄養をみていく。わずかな食品にしか含まれない栄養素や、食品中に含まれる量が非常にわずかな栄養素を評価する場合には、とくにこれが当てはまる(115)。タンパク質の平均摂取量の十分な推定に必要な食事記録の日数はより少なくてよい。なぜなら、日によってタンパク質摂取量はそれほど変動しないためである(115)。食事摂取基準(DRI)には、以下が含まれる。  推奨栄養摂取量(RDA;Recommended Dietary Allowance)──各年代別および性別のほとんどの健康的な人のニーズに合わせる上で適切となる、毎日平均して必要となる栄養必要量。  目安量(AI;Adequate Intake)──食事摂取基準が確立していない場合の、必要となる毎日平均して推奨される栄養摂取レベル。  許容上限量(UL;Tolerable Upper Intake Level)──毎日平均して摂取する際、健康に悪影響を及ぼさない上限量。許容上限量を超える摂取は、悪影響を及ぼす潜在的リスクが高まる(許容上限量は、食品や水分、サプリメントなど、摂取するものすべてに示される)。  推定平均必要量(EAR;Estimated Average Requirement)──各年代別および性別の健康的な人の半数のニーズに合うのに十分であると考えられる平均摂取量。  いくつかの栄養素についての研究では、大部分の人において適切な量の栄養素が摂取されていないことが示された。すべてのサブグループ(全年代の男女)において、ビタミンEおよびマグネシウムの不足が高い割合でみられた(71, 173)。ビタミンEは多くの食品に含まれているが、油脂やナッツ、種子類はこの栄養素の最高の供給源である。マグネシウムは幅広い種類の食品に含まれているが、含まれる量は少ないことがしばしばある。マグネシウムの最高の供給源のいくつかは、ナッツや種子類(とくにカボチャの種やアーモンド、カシューナッツ)、リョクトウ、リマ豆を含む豆類である(175)。加えて、2歳以上の人は、食物繊維とカリウムの通常の平均摂取量がDRI(食事摂取基準)未満である(175)。2015食事ガイドライン助言委員会の科学的報告(176)では、食物繊維やカリウム、カルシウム、ビタミンDを考慮すべき栄養素としてリストに挙げている。乳製品や栄養強化飲料(豆乳やオレンジジュースなど)、白身魚であるが缶詰のイワシは優れたカルシウム供給源であり、栄養強化飲料(牛乳やオレンジジュース、豆乳)、栄養強化ヨーグルトはビタミンDの優れた供給源である(176)。また、鉄も特定の人たちにおいて考慮すべきである。多くの女性や妊娠可能な青年期の情勢は、鉄が不足しており、これらのグループでは食事における葉酸の必要量も満たしていない。赤身の肉、鉄強化シリアル、豆類は鉄の優れた供給源である。マメ類やエンドウマメ、ピーナッツ、ヒマワリの種は、食事で摂れる葉酸の最高の供給源である(176)。最後に、今では考慮されない栄養素の1つであるビタミンB12の吸収は、高齢者において約10〜30%にみられる、胃における塩酸が不十分であることに影響を受ける。したがって、50歳以上の人は、合成ビタミンB12添加食品を摂取すること、あるいはサプリメント摂取が勧められる。なぜなら、それらの供給源からビタミンB12を吸収できるためである(176)。ビタミンB12は動物性食品や栄養強化ニュートリショナルイースト、栄養強化シリアルにみられる。牛肉、ラム肉、子牛肉、魚はこの栄養素の最高の供給源である(175)。 主要栄養素  主要栄養素とは、食事で多くの量を摂取する必要のある栄養素である。主要栄養素とされる3つの重要な栄養素は、タンパク質、炭水化物(糖質)、脂質である。 タンパク質  タンパク質は、人体のすべての細胞における主要な構造的・機能的要素である。食事でのタンパク質は、発育・発達や、細胞をつくったり修復するのに用いられる。また酵素や運搬、ホルモンとしった役割も果たす。したがって、食事でのタンパク質摂取は健康や生殖、細胞の構造および機能の維持に必須である(69)。  タンパク質は、炭素や水素、酸素、窒素で構成される。「アミノ」とは「窒素を含む」を意味し、アミノ酸分子が数十個から数百個結合してできるタンパク質が、自然界には数千種類も存在する。人体におけるタンパク質は、20の異なるアミノ酸がさまざまに組み合わさって構成されている。4つのアミノ酸は、人体で合成することができ、食事から摂取する必要がないため「非必須」であると考えられる。9つのアミノ酸は「必須」である。なぜなら、人体はそれらをつくることができないためである──食事を通して得なければならない。そして最後に、8つのアミノ酸は条件的必須であると考えられている。これらのアミノ酸は通常は必須ではないが、病気のときやストレスがかかっているときに必須になり、したがって食事を通して得なければならない(169)。アミノ酸について、表9.3に列挙している。  アミノ酸はペプチド結合によってお互いに結合している。2つのアミノ酸が結合したものはジペプチド、数個のアミノ酸が結合したものはポリペプチドと呼ばれる。ポリペプチドの鎖が結合してさまざまな構造や機能を持つ多数のタンパク質を形成する。人体に保持されているタンパク質のほぼ半分は骨格筋として存在するが、約15%は皮膚や血液を含む構造的な組織を形成している。身体のタンパク質の残りは、肝臓や腎臓、骨の内部といった内臓の組織である(48)。 タンパク質の質と推奨摂取量  タンパク質の質は、アミノ酸の含有量とタンパク質の消化のしやすさによって決定され、タンパク質の窒素が消化の間にどれほど吸収され、成長や維持、修復に必要なアミノ酸がもたらされるかによって計算される。より質の高いタンパク質は消化しやすく、すべての必須アミノ酸を含んでいる。動物性タンパク質──卵、乳製品、肉、魚、家禽類──は、すべての必須アミノ酸を含んでいるが、植物性タンパク質の中で8つの必須アミノ酸を含むのは大豆のみである。一般的に、植物性タンパク質は、動物性タンパク質よりも消化されにくいが、調理や準備工程で改善することができる(69, 110)。またタンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS)といったタンパク質の測定手法は、タンパク質の消化のしやすさ(生体利用能)を、そのタンパク質が身体のタンパク質合成に必要な必須アミノ酸をまかなう能力を計算に入れているが、それらは食品に含まれるタンパク質以外の分子が、アミノ酸の生体利用能を変化させるかについては計算に入っていない。食品は抗栄養因子──栄養の消化・吸収を低下させる分子──を含んでおり、これらは栄養の生体利用能を減少させる(159)。いくつかの抗栄養因子は、消化による喪失とアミノ酸の構造的変化(アミノ酸の生体利用能を制限する)を導く(110)。たとえば、調理の間に茶色になる食品がある。この茶色への変化は、メイラード反応(Maillard reaction)と呼ばれており、あるアミノ酸の生体利用能を低下させる。また、植物性タンパク質の大部分においては1つまたは2つ以上の必須アミノ酸が不足しているが、ベジタリアンやビーガン(植物あるいは植物製品しか摂取しない──肉や魚、家禽類、卵、牛乳、その他動物に由来する食品は摂らない)は、別々のアミノ酸をもたらすマメ類や野菜、種子類、ナッツ、米、全粒粉を含む多様な植物性食品を摂取することで、タンパク質の必要量を満たしており、これにより連続した毎日の中ですべての必須アミノ酸を摂取することができる(184)。  推奨摂取量にはタンパク質の必要量と記載されているが、実際にはアミノ酸の必要量を指す。身体を動かすことの少ない健康な成人では、アミノ酸は、細胞や細胞におけるタンパク質の恒常的なターンオーバー(代謝回転)のために必要となる。細胞のターンオーバー──恒常的な細胞の破壊と再生──の間、体内の遊離アミノ酸プールは、迅速かつ最大のアミノ酸の供給源である(106)。この代謝プールは、組織のターンオーバーで放出されるアミノ酸に加えて、食事からのタンパク質の消化により補充される。通常、摂取するタンパク質の量よりもはるかに多くのタンパク質が毎日代謝されており、これはアミノ酸が再利用されていることを示している(119)。しかし、この過程は完全に効率的ではないため、損失を補うために食事からのアミノ酸が必要とされる。  19歳以上の男女におけるタンパク質のRDAは、窒素バランスの研究に基づいており、体重1kgあたり1日あたり良質なタンパク質0.8gである(69)。子どもやティーン(13〜18歳)、妊婦、授乳中の女性は一日のタンパク質必要量が高く、それらのグループにおけるRDAも、そのように反映されている。しかしながら、タンパク質の必要量は、カロリー摂取と反比例する。なぜなら、少量のタンパク質はその人のカロリーバランスが負である状態のとき、つまり消費カロリーのほうが摂取カロリーよりも多いとき、タンパク質はエネルギー源として代謝されるためである(たとえば、多くの状況においては総カロリーの1〜6%のみであるが、グリコーゲン枯渇状態の継続的な運動では10%にまで達する)(69, 95, 165)。この場合、タンパク質はアミノ酸プールの補充には使われない。カロリー摂取が低下すると、タンパク質の必要量は増加する(101)。したがって、米国医学研究所(IOM)は、タンパク質における許容主要栄養素分布範囲(AMDR)を確立し、広範囲のタンパク質摂取について網羅している。AMDRは、1〜3歳においては総カロリーの5〜20%、4〜18歳の子どもにおいては10〜30%、18歳以上の成人においては10〜35%である。通常、男女ともに平均して15%のカロリーをタンパク質から摂取している(172)。栄養のAMDRには、慢性疾患のリスク軽減と関連する範囲を含むが、その他の必須栄養素の推奨摂取量も提供している(176)。タンパク質のDRIは、AMDRに収まるが、DRIは体重のみに基づいており、カロリー摂取の大小については考慮されていない。AMDRに基づくと、カロリー摂取が低いと、総摂取カロリーが2000kcal以下では、100kcal低下するごとにタンパク質の必要性が約1%増加する。総摂取カロリーが高い場合、タンパク質の必要性は総カロリーに対するパーセンテージとして表現され、ある時点までは下がる。実務においては、スポーツ栄養士はまず選手のタンパク質摂取量を確立し、それから炭水化物や脂質を加え、総カロリーの必要量を決定すべきである(93)。 タンパク質のためのRDAについての考慮事項  タンパク質のためのRDAについては議論があり、科学者の中には、骨の健康のために(54)、あるいは体重管理や筋の構築・修復のために(121, 122)、RDAよりも多く摂取すべきであると示唆する人もいる。加えて、高タンパク質で低糖質の食事は血中脂肪に好ましい影響を及ぼし、とくに肥満者には当てはまることが示唆されており、したがって心臓血管系疾患やメタボリックシンドロームのリスク要因をいくらか軽減させる可能性がある(94)。  タンパク質は強い骨のための(建築で用いられる)ブロックであり、骨の体積の50%、また骨の重量のうち33%を占める(56)。タンパク質が骨へ与える影響は、一部はインスリン様成長因子I(IGF-I)によるものであり、これは肝臓でつくられ、骨や筋の形成を促進する(151)。また、研究では健康な人が体重1kgあたり0.7〜2.1g、サプリメントによる(食事ではない)タンパク質を摂取することで、尿中カルシウム排出と腸内カルシウム吸収の両方の増加をもたらし、尿を介したカルシウム喪失を増加させることが示唆されている(87)。実際に、食事でのタンパク質摂取が少ないと(体重1kgあたり0.7kg)、腸内カルシウム吸収を抑制する(86)。  タンパク質は、体重管理において多面的な役割も果たしている。まず、用量依存的に満腹を促進する。すなわち、タンパク質の量が多いことは、より大きな満腹感をもたらす(41)。しかしながら、タンパク質の満腹に及ぼす影響は、摂取タイミング、形態(個体vs.液体)、同時に摂取したその他の主要栄養素、次の食事までの時間によっても変化する(5)。タンパク質の種類も、満腹感に影響を及ぼすが、どのタンパク質が最も大きな影響があるかについては完全には解明されていない(16, 59, 101)。タンパク質は、最も大きな熱産生効果も持っている──タンパク質が消化されるとき、糖質や脂質と比較してより多くのカロリー(熱量)が燃やされる。そして最終的に、タンパク質がより多い食事は、カロリーの少ない食事をしている人において筋の減少を抑え温存させるうえで手助けとなる(91, 134)。  タンパク質のアミノ酸は、成長(筋の成長を含む)や、組織の修復、酵素やホルモンの合成、細胞の修復や新しい細胞をつくるのに用いられる。一般的なフィットネスプログラムを行う成人は、体重1kgあたり1日あたり0.8〜1.0gのタンパク質摂取で必要量を満たすことができ、より強度の高い運動を行うアスリートは、より多くのタンパク質が必要となる(21)。十分なカロリーを摂取する有酸素性持久力選手には、体重1kgあたり1日あたり約1.0〜1.6gのタンパク質が必要である(128, 165)。ストレングスアスリートは体重1kgあたり1日あたり1.4〜1.7gのタンパク質が必要である(96)。ストレングスおよび有酸素性持久力、あるいは無酸素性スプリントトレーニングを組み合わせて行う選手は、体重1kgあたり1日あたり1.4〜1.7gのタンパク質を摂取するべきである。カロリーを減らした食事を摂取している選手は、体重減少の間、筋組織を保持するために一日あたりより多くのタンパク質が必要となるかもしれない。  一日あたりの適正な量のタンパク質を摂取することに加えて、研究では筋組織が最もアミノ酸を受け入れる運動直後のタイミングで摂取するという考えが支持されている。実際に、運動後、筋タンパク質合成と分解の両方が増加するが、絶食状態で運動した場合、全体的なバランスは負となる(127)。運動後にタンパク質を摂取することは、筋タンパク質合成を増加させ、筋のアミノ酸に対する感受性は運動後48時間にわたって増加する。しかしながら、この感受性は時間の経過と共に減少する。したがって、より早くタンパク質を摂取することは、時間が経過してから摂取するよりも、急性のタンパク質合成により大きな影響を及ぼす(28, 42, 97, 145)。有酸素性持久力運動後に摂取すべきタンパク質の量については、まだ完全には解明されていない。しかしながら、一般的なガイドラインとして、糖質に対するタンパク質の比率は4:1または3:1であることが示唆されている(85)。レジスタンストレーニング後は、20〜48gという幅広いタンパク質摂取が、急性のタンパク質合成を最大限刺激するうえで有用であることが証明されている(82)。その量は、少なくとも一部はタンパク質におけるロイシンの含有量によって決まり(28)、高齢者における筋のアミノ酸への感受性は低下するため年齢にも影響を受ける(84)。  食事摂取基準を超える量のタンパク質摂取についての懸念は、健康的な人の大部分においては見つかっていない(105)。組織の合成に必要とされる量よりも多く摂取された過剰なタンパク質は分解され(65)、また窒素は尿に尿素として排泄され、残ったケト酸はエネルギー源として直接使われるか、炭水化物(糖新生)、または体脂肪となる(60)。実際に、選手において高タンパク質を摂取させた研究において、体重1kgあたり2.8g(7日間の食事記録によって評価された)のタンパク質は、腎機能に何らの障害も引き起こさなかった(132)。ストレングス&コンディショニング専門職は、筋をつくり修復するために推奨されたよりも一貫して多い高タンパク質を摂取することは勧められていないことに気をつけるべきである。なぜなら、炭水化物および脂質(そして高炭水化物食・高脂質食に広くみられる栄養素)摂取が少なくなる可能性があるためである。  一般的に摂取される食品のタンパク質含有量について、表9.4に示した。  >選手は、筋をつくり、修復するためにタンパク質についての食事摂取基準よりも多くのタンパク質を必要とする。競技やトレーニングプログラムによっては、体重1kgあたり1.0〜1.7gのタンパク質が推奨される。 炭水化物(糖質)  炭水化物(糖質)は主にエネルギー源としての役割を果たす。しかしながら、炭水化物は必須栄養素ではない。なぜなら、身体は特定のアミノ酸における炭素骨格を分解してグルコースへと転換する(糖新生)ことができるためである。炭水化物は炭素や水素、酸素から構成されている。炭水化物は構成する糖(糖質)の数によって単糖類、二糖類、多糖類の3つに分類される。  単糖類(グルコースやフルクトース、ガラクトース)は、1つの糖を持つ分子である。グルコースは、血液中を循環する糖として、また、細胞の主要なエネルギー基質として存在する。さらに、グルコース分子からグリコーゲン(筋や肝細胞に貯蔵される多糖類)がつくられる。食品において、グルコースは通常ほかの単糖類と結合し、スクロース(ショ糖)といった多様な糖をつくる。単離されたグルコースは、飴やスポーツドリンクにみられ、グルコースの化学的異性体であるデキストロースの形で含まれている。フルクトース(果糖)はグルコースと同じ化学式を持つが原子の配列が異なるため、より甘く、異なった特性を持つ。蜂蜜の甘味はフルクトースに由来し、フルクトースは、自然界で果物や野菜に存在する。体内で、フルクトースはほかの糖に比べてインスリンの分泌を引き起こさないので、有酸素性持久力パフォーマンスの研究分野において注目されてきた。3番目の単糖類であるガラクトースは、グルコースと結合してラクトース(乳糖)を形成する。  二糖類(スクロース、ラクトース、マルトース)は2つの単糖類が結合したものである。スクロース(ショ糖、または砂糖)は最も一般的な二糖類で、グルコースとフルクトースからなる。スクロースはほとんどの果物に存在し、サトウキビやビート(サトウダイコン)のシロップから結晶化されてブラウンシュガー(黒糖)、ホワイトシュガー(砂糖)、パウダーシュガー(粉砂糖)がつくられる。ラクトース(乳糖。グルコースとガラクトースが結合したもの)は、哺乳動物の母乳にしかみられない。マルトース(麦芽糖。グルコースとグルコースが結合したもの)は、主に消化時に多糖類が分解されて生じる。麦芽糖はアルコールの発酵過程においても発生し、ビールに含まれる主要な炭水化物である。  多糖類は複合炭水化物とも呼ばれ、数千ものグルコースユニットからなる。最も広く知られている多糖類は、デンプン、食物繊維、グリコーゲンである。デンプンは植物におけるグルコースの貯蔵形態である。穀類、豆、野菜はデンプンの優れた供給源である。デンプンは、エネルギー源として使用される前に、まずグルコースに分解されなければならない。食物繊維は植物の細胞壁の構成要素であり、これも炭水化物の1つの形である。セルロース、ヘミセルロース、βグルカン、ペクチンなどの食物繊維、そして炭水化物ではない繊維状物質(リグニン)は、一般にヒトの消化酵素で消化されない。食物繊維は、身体において異なる生理学的効果を持つ。いくつかの種類の食物繊維は、腸が空になるのを遅らせ、これは膨満感に一時的に影響し、ほかの種類の食物繊維は、かさを増し、水分を保持し、便秘を減らし、便の通過時間を減少させる。加えて、水溶性食物繊維のいくつかは、コレステロールの吸収を減らし、このことにより摂取後の血中コレステロールレベルを低下させるかもしれない(107)。また、プレバイオティクス的に食物繊維は腸内細菌の成長を選択的に刺激する(32, 135)。食物繊維に富む食品には、マメ類、エンドウマメ、ブラン(ふすま)、多くの果物、野菜、全粒穀物製品のいくつかが含まれる。  グリコーゲンは、ヒトの肝臓や筋において少量みられ(77, 166)、総量で体重1kgあたり約15gであり(1)、動物性組織において一時的な貯蔵エネルギーとして存在する(20)。私たちが食べるステーキや鶏胸肉、魚のフィレといった動物性の肉に存在するが、それほど多くの量は含まれない。筋や肝臓に入ったグルコースが、エネルギーとして代謝されなければ、グリコーゲンへと合成される。身体における3/4のグリコーゲンは、骨格筋に貯蔵されており、残りの1/4は肝臓に貯蔵されている(20)。グルコースからグリコーゲンが生成される過程をグリコーゲン合成と呼ぶ。  選手は普段の食事でさまざまな炭水化物を摂取する。しかしながら、彼らが食事の質を改善したい場合に、健康全般あるいはパフォーマンスに対する有害作用を持つ食品をより少なく摂取するうえで、グリセミック指数やグリセミック負荷といった主要栄養素のランキングシステムを考慮するかもしれない。 グリセミック指数とグリセミック負荷  グリセミック指数は(GI)は、炭水化物(糖質)がどれだけ素早く消化・吸収されるか、したがって血中グルコース濃度(血糖値)が摂取2時間後に、どれほど上昇するかを、同じ量(g重量)の参照される食品──通常は精製された小麦のパンまたはグルコース(GIは100)──と比較することによってランクづけするものである(76)。 グリセミック指数=[テストする食品の炭水化物25または50g分を接種後の血中グルコース応答曲線下の領域面積 ÷ 同量の標準食品(g)の曲線下の領域面積]×100  低GI食品はゆっくりと消化・吸収され、その結果、参照食品と比較して血中グルコースレベルの上昇は小さく、膵臓からのインスリンの分泌も少ない(45)。インスリンにより、細胞へのグルコース輸送が促進され、血中グルコースレベルを低下させる手助けとなる。細胞内のグルコースの運命(最終的にどうなるか)は、どこへ運ばれるかによって決まる。たとえば、筋細胞はエネルギーのためにグルコースを用いるが、脂肪細胞はグルコースをトリグリセリド(脂肪)へと変換する。  GIは人々が血糖レベルをよりよくコントロールするために開発されたが──糖尿病患者にはとくに有用である──、低GI食は高GI食と比べて、肥満その他のリスクを低減させるのも助けるかもしれないという仮説を立てている研究者もいる(99, 100)。しかしながら、GIの体系は正確性に限界があるという問題がある。第一に、ある1つの種類の食品に対して公表されているGI値は、測定法の違いや用いられた成分、熟し具合、加工や調理、貯蔵方法によって相当の差が生じる可能性がある(27, 60)。第二に、炭水化物を食事の一部として摂取することは、あるいは摂取量の差は、GIに影響を及ぼす(45)。低GI食品には、一般的に野菜やマメ類、マメ科植物、全粒穀物が含まれる(表9.5を参照)。  運動前にグリセミック指数の低い食品を摂取することはインスリンの分泌が最小限となることで糖質の節約につながり、したがってパフォーマンスが向上すると推測する研究者もいるが、この仮説を支持する十分なエビデンスは存在しない(21)。研究結果はさまざまであり、低いGI食を運動前に摂取することは、高GI食と比較して疲労困憊までの時間が改善し(35, 167)、その他の複数の知見は低GI、高GI食品を運動前に摂取することはランニングパフォーマンスに影響を及ぼさないというものであった(160, 180)。  したがって、GIを食品選択のガイドに利用している選手は、運動前の低GI、高GI食品を試すことができるが、高GI食品は運動中に速やかに活動のエネルギーを得ることができ(23)、運動直後にグリコーゲン貯蔵をより素早く補充できる(131)。  グリセミック負荷(GL)は、炭水化物の量を食品中に含まれるグラムで計算するもので、これもグリセミック反応に影響を及ぼす要因の1つである。グリセミック負荷は一回分の量(portion size)が考慮されているので、標準的な提供量(serving size)に基づくGIよりも現実的な基準となる。表9.6に、特定の食品におけるGIとグリセミック負荷の間の違いについて示している。グリセミック負荷は、GIとその食事における炭水化物の量をかけ、それら全体を100で割ったものに等しい。 グリセミック負荷= 個別の食品のGI × 食品の一回量ごとの糖質のグラム数 / 100  グリセミック負荷がより高い食品は、血糖値の上昇およびその後のインスリン放出がより大きいと推測される(45)。  運動と組み合わせた低GL食は、高齢や糖尿病の成人においてインスリン感受性を高めることが示されており、したがってそういった人々において潜在的な治療となる可能性がある(90)が、観察研究や介入研究において、低GI食および低GL食は、低レベルの炎症マーカーと関連していることが示唆されている。慢性的な低グレードの炎症は、慢性疾患における潜在的リスクファクターであると考えられている(19)。加えて、(すべてではないが)いくつかの研究では、GIまたはGLがより低い食事は、空腹時インスリンが低レベルであることとともに心臓血管系リスクファクターと関連していることがわかった(63, 152)。 食物繊維  食物繊維の少ない食事は、便秘、心疾患、結腸ガン、2型糖尿病などを含むいくつかの疾患との関連が指摘されている。食物繊維のDRIは、女性で1日あたり21〜29g(年齢や妊娠、授乳によって決まる)、男性では年齢グループにより1日あたり30〜38gである。食物繊維は、果物、野菜、ナッツ、種子、豆、全粒小麦のパンやオートミール、ポップコーンなどの全粒穀物製品に広く含まれる。 選手向けの炭水化物の必要量  数多くの研究において、糖質(炭水化物)によって有酸素性持久力運動中の疲労困憊までの時間のパフォーマンスとともに、高強度間欠的競技における仕事の出力とパフォーマンスが改善することが示されている(2, 11)。グリコーゲンレベルが高いことにより、タンパク質がエネルギー源として用いられることを防ぎ、したがって筋の分解を抑えるのを手助けすることも示されている(しかしながら、タンパク質摂取量の差も筋の分解に影響を及ぼす)(64)。  炭水化物の推奨も、トレーニングの種類に大きく基づいている。中等度の強度(70〜80% VO2max)で一日あたり90分異常の練習を行う有酸素性持久力選手は、一日あたり体重1kgあたり8〜10gの炭水化物を摂取することを目標とすべきである(75)。このレベルの炭水化物の摂取によって恩恵を受ける選手には、長距離走者や自転車ロード競技選手、トライアスロン選手、クロスカントリースキー選手などが挙げられる。研究では、サッカー選手のような高強度で間欠的な運動を行う選手にも高炭水化物食の効果があることが示されている(10, 163)。バスケットボールやレスリング、バレーボールなどの幅広い種類のスポーツ選手の炭水化物の必要量についての研究は限られている。ストレングスやスプリント、スキルの身体活動を行う選手は、1日あたり体重1kgあたり約5〜6gの炭水化物を必要とする(153)。  グリコーゲン再合成を素早く刺激するために、体重1kgあたり約1.5gの高グリセミック炭水化物を有酸素性持久力トレーニング後30分位内に摂取すべきである(74)。選手はより高炭水化物の食事あるいは軽食を規則的な間隔(約2時間おき)で摂取している場合に、トレーニング後すぐにより少ない炭水化物を摂取することができる。毎日は練習していない選手は、十分な炭水化物を24時間の食事の中で摂取できている場合にグリコーゲンを補充することができる。最終的に、グリコーゲンのパフォーマンスに及ぼす顕著な影響にもかかわらず、選手は炭水化物食へと適応し、運動中のエネルギー源としての炭水化物への依存が低下する(43)。選手の中には、この戦略を全体的なカロリー摂取量を減少させるために用いる者もいる。  >選手は、炭水化物摂取の食事の変化に適応する。規則的に炭水化物を摂取する選手は、有酸素性運動中に炭水化物を主要なエネルギー源に用いるが、継続的に低炭水化物食を摂取することは、エネルギー源としての脂質への依存がより大きくなる。 脂質  脂肪と脂質は交換可能な用語としてしばしば用いられるが、脂質のほうが広い意味を持つ。脂質には、トリグリセリド(油脂。植物性の油と動物性の脂肪の両方)とともに、ステロールやリン脂質といった脂肪化合物も含まれる。栄養学において脂質の中で最も重要なのは、トリグリセリドや脂肪酸、リン脂質、コレステロールである。トリグリセリドは3つの脂肪酸とグリセロールが結合してできる。食品中や体内に存在する脂質のほとんどはトリグリセリドの形をとっているため、本章では脂肪という言葉はトリグリセリドを指す。  炭水化物と同様に、脂質は炭素、酸素、水素原子を含むが、脂肪酸鎖は酸素原子に対して炭素と水素の数が多いため、1g当たりのエネルギーも高い。たとえば、炭水化物とタンパク質が1g当たり約4kcalであるのに対して、脂肪は約9kcalである。食事における油脂は、異なる種類の脂肪酸によって構成される。  飽和脂肪酸には二重結合がなく、その炭素分子は水素により飽和されている。飽和脂肪酸は生理学的・構造的なある機能のために用いられるが、身体は、これらの脂肪酸をつくることができる。したがって、飽和脂肪酸のための食事必要量は定められていない(174)。不飽和脂肪酸は、いくつかの炭素分子がお互いに二重結合しており、化学的により反応しやすくなっている。二重結合を1つ含む脂肪酸は一価不飽和脂肪酸であり、2つ以上の二重結合を含む脂肪酸は多価不飽和脂肪酸である。多価飽和脂肪酸のうち2つは、必須脂肪酸である。すなわち身体でつくることができないということを意味しており、これにはオメガー6およびオメガー3脂肪酸がある。これらの2つの脂肪酸は、健康な細胞膜の形成、脳や神経系の適切な発達と機能維持、ホルモンの生成に不可欠である。オメガー6脂肪酸は、食事において大量に含まれ、またダイズやトウモロコシ、ベニバナ油、それらの油からつくられる製品にみられる。オメガ3脂肪酸を含む食品は少なく、魚、とくにサケやニシン、オヒョウ(カレイ様の大きな魚)、サバといった油の乗った魚には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれる。EPAやDHAは、用量依存的にトリグリセリドを減らし、少ないものの統計的に有意に血圧を減少させ(とくに高齢者において)、また不整脈に対して効果がある可能性もある(107, 113)。  オメガ3の必要量に合致させるために、亜麻仁やクルミ、大豆油、キャノーラ(アブラナ)油を摂取することもできる。これらはオメガ3脂肪酸、αリノレン酸(ALA)を含みEPAやDHAへと変換されるためである。しかしながら、この変換の過程は非効率的である。vivo(生体内での)研究によると、成人においてALAのうち約5%はEPAへと変換され、0.5%未満のALAはDHAへと変換される(130)。したがって、ALAを含む食品は、その人のオメガ3摂取に対して考慮されるものの、体内のEPAおよびDHAのレベルに相当する影響を持たない。ALAに富む食品は、心臓血管系のいくつかのリスクファクターを改善するかもしれない。しかしながら、そういった栄養豊富な食品中のALAあるいは他の化合物のどれが関与するのか、あるいはそれらの組み合わせによるのかは明らかでない(38)。生理学的機能に加えて、脂肪は多くの食品に特徴的な味、香り、食感を与える面でも重要である。一般的に食品に含まれる脂肪や油脂のほとんどはこれら3つの脂肪酸を含み、3つのうちのいずれかの比率が高い。大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油は多価不飽和脂肪酸を比較的多く含み、オリーブ油、ピーナッツ油、キャノーラ油は一価不飽和脂肪酸を多く含んでいる。ほとんどの動物性脂肪と熱帯植物の油(例:ココナッツ油、パーム核油)は飽和脂肪酸が多い。  脂肪は体内に貯蔵されたとき、多くの役割を果たす。ヒトのエネルギーの多くは主に脂肪組織として貯蔵されているが、骨格筋内には少量のみであり、とくに有酸素的トレーニングを積んだ選手では少ない(150)。体脂肪は器官を遮蔽および保護し、ホルモンを調節し、脂溶性ビタミンのA、E、D、Kを運搬する。 コレステロールとの関係  コレステロールは、ワックス(蝋)様で脂肪のような物質であり、細胞膜の構造および機能において重要である。それに加えて、コレステロールは、胆汁酸塩やビタミンD、性ホルモン(エストロゲン、アンドロゲン、プロゲステロン)やコルチゾールなどのホルモン生成に用いられる。またコレステロールは身体における多くの不可欠な機能を有しているが、高レベルのコレステロールはアテローム性動脈硬化(血管壁にプラークがたまり肥厚化することで血管が硬くなり、血液の通り道が狭くなる)を引き起こすことがある。したがって、血中コレステロールが高いことは、心臓病や脳卒中のリスクファクターである。  総コレステロールや低密度リポタンパク質(LDL)、トリグリセリドが高レベルであることは、いずれも心臓病のリスク増加と関連している。LDLは、粒子の大きさによって、さらに小さな細分画に分けることができる。より小さく、密度の高い粒子は、超低密度リポタンパク質(VLDL)と呼ばれ、より大きな粒子であるLDL粒子と比べてアテロームを生成しやすい(44)。高レベルの飽和脂肪酸またはトランス脂肪酸、体重増加、食欲不振はLDLコレステロールを増加させ得る(162)。しかしながら、炭水化物摂取の増加に伴ってVLDLレベルは増加する(116)。高レベルの高密度リポタンパク質(HDL)は、心臓病に対しては保護的であるが、治療目標ではない(臨床家は、HDLに注目しないようにと言われる)。表9.7に、どのようにコレステロールが分類されるか(LDL、総、HDL)を示す。  精製された炭水化物の多量の摂取、体重増加、過剰なアルコール摂取、超低脂肪食は、トリグリセリド(血中の脂肪)を増加させることがある。しかしながら、コレステロールと同様に、座業中心の生活習慣、過体重や肥満、喫煙、遺伝、ある種の病気、服薬などといったいくつかの要因がトリグリセリドに影響を及ぼす(125, 162)。  2015食事ガイドライン助言委員会の科学的報告では、トランス脂肪酸を含む水素添加油脂を部分的に避けること、また飽和脂肪酸を総カロリーの10%未満に制限すること、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸、とくに多価不飽和脂肪酸に置き換えることを勧めている。それに加えて、砂糖を追加するのは最大で総カロリーの10%にするべきであると推奨している(176)。 脂質とパフォーマンス  筋内の脂肪酸と血液中を循環する脂肪酸は、いずれも運動中のエネルギー源となり得る(126)。体内の炭水化物の貯蔵容量に限界があるのに比べて、貯蔵脂肪は多量に存在し、運動における莫大なエネルギー源となる(54)。たとえば、72kg(160ポンド)で体脂肪率が4%のやせたランナーは、約22400kcalを脂肪組織に貯蔵している(53)。休息時と低強度運動中は、生み出されるエネルギーのうちの高い割合が脂肪酸の酸化によってまかなわれる(140)。運動強度が上がった場合、主なエネルギー源は徐々に脂肪から炭水化物へとシフトする。一貫した有酸素的トレーニングにより、筋の脂肪酸を使う能力は増加する(79)。トレーニングに加え、高脂肪・低糖質食を長期間にわたり摂取することにより、身体はエネルギー源のためにより多くの脂肪を用いることに適応する(57, 79)。また、身体が適応する食事の種類はパフォーマンスへと影響を及ぼすことがあり(66)、高脂肪・低糖質食の影響は多様であり、個人によって異なる(129, 139, 143)。  >人体には、長時間にわたる練習セッションや試合の燃料となるのに十分な量の脂肪が存在する。 ビタミン  ビタミンは有機物質(炭素原子を含む)であり、 必要量はごく少量であり、種類ごとに特定の代謝機能を持つ(67, 177)。ビタミンは補酵素として働くのが典型的であり、身体における数多くの反応を促進する。たとえばビタミンB群は炭水化物の代謝からエネルギーをつくり出すのを助ける。表9.8には、それぞれのビタミンの機能とそれを供給する食品を挙げている。  水溶性ビタミンには、ビタミンB群やビタミンCが含まれ、水に溶けて血液中を輸送される。肝臓に数年にわたって貯蔵されるビタミンB12を除き、水溶性ビタミンは体内に認識できる量の貯蔵はされず、必要な分を使ったら残りは尿へと排出される(170)。またビタミンB12の過剰摂取による副作用は知られていないが、身体が使うことのできるよりも多く摂取することは、エネルギーを増加させたり健康を高めることはないだろう(17, 72)。ビタミンA、D、E、Kは脂溶性であり、したがって脂肪によって血液中を輸送され、また体内では脂肪組織に貯蔵される(142)。前もって形成されたビタミンA(ベータカロテンやアルファカロテン、ベータクリプトキサンチンといった、体内でビタミンAへと転換されるものではない)が過剰であると毒性を伴い、肝障害、頭蓋内圧(偽性脳腫瘍)、めまい、吐き気、頭痛、皮膚刺激、関節および骨の痛み、昏睡、死亡すらを含む明らかな有害作用と関連している(67, 141)。過剰なビタミンA摂取は食事を通して起こることもあるが、典型的には高レベルのビタミンAサプリメント摂取の結果として起こる(70, 142)。毒性のあるレベルのビタミンDは、心臓の不整脈や、血中カルシウムレベルの上昇を起こすことがあり、これにより血管および組織のカルシウム沈着(石灰化)を起こし、これも心臓や血管、腎臓に損傷をもたらす(142)。ビタミンEは抗凝固の役割を果たし、したがって血液を薄くする。過剰な量のビタミンEを定期的に摂取することで、血清ビタミンEのレベルが高くなり、出血性卒中、とくに血液の薄い人においてリスクを高める(124)。ビタミンKは血液凝固を助けるため、このビタミンの過剰摂取は、ワーファリン(コーマディン)といった抗凝固薬の作用を阻害することがある(92)。 ミネラル  ミネラルは骨や歯、爪の構造に寄与し、また広範囲にわたる代謝機能を担っている。たとえば、カルシウムは骨と歯の形成・機能、神経伝達、筋収縮に必要である。鉄は酸素の運搬に必要であり、エネルギー代謝に必要な酵素の構成物質でもある。カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、電解質のナトリウム、カリウム、塩化物はしばしば主要ミネラルと呼ばれる。競技選手にとってミネラルは骨の健康、酸素運搬能、体液のバランス、電解質バランスにおいて重要性である。ミネラルとその機能、供給源となる食品を表9.9に示す。  2つのミネラル、鉄とカルシウムはさらに重要性が高い。食事において十分な鉄を摂取しない選手は、鉄欠乏あるいは鉄欠乏性貧血を起こすことがあり、どちらもパフォーマンスに対して悪影響を及ぼすことがある。食事からカルシウムが十分に摂取できないと、骨密度低下や、将来において骨量減少(オステオペニア)や骨粗鬆症のリスクが高まることに寄与する。 鉄  鉄は、ヘモグロビン(全身に酸素を運搬するタンパク質)の機能と合成の両方に必要不可欠である(158)。それに加えて、鉄はミオグロビン(酸素を筋へ運搬するタンパク質)の構成要素である(51)。このミネラルは、成長や発達、細胞の機能、ホルモンの合成および機能において重要な役割を果たしている(41, 46, 85)。  鉄欠乏は、世界で最も広くみられる栄養障害である(183)。発展途上国の人々に偏って影響があるが、先進国においても一般的である。米国国民健康栄養調査(NHANES)において、16〜19歳の女性のうち約16%、20〜49歳の女性のうち12%が鉄欠乏であることがわかった。いくつかの研究では、女性の有酸素的持久力選手の鉄欠乏について調査し、対象とした女性の4人に1人において鉄欠乏が陽性であった(102, 137)。鉄欠乏は、3つの段階で起こる(重症度の順に)。すなわち、鉄欠乏、限界的鉄欠乏、貧血である(89, 118)。鉄は働いている筋に酸素を運搬しており、限界的鉄欠乏においてすら、競技パフォーマンスは阻害される(18, 61)。鉄欠乏性貧血は、鉄の貯蔵が低い状態が長期間にわたって続き、全身に酸素を運ぶ健康な赤血球が十分につくられなくなることで起こる(157, 161)。症状は人によって異なり、無徴候性の者もいれば、症状に慣れてしまって正常であると思うものもいる。鉄欠乏あるいは鉄欠乏性貧血の症状には、脱力感、疲労、易刺激性、集中力の不足、頭痛、運動能力の定価、頭髪の減少、口の乾燥が含まれる(15)。その他の鉄欠乏に関連する症状には、頻繁に寒気を感じる、舌の炎症(舌炎)、日常的な活動での息切れ、異食症(洗濯用のり、土、粘土、氷といった食物でない物質を食べたいという欲求を持つ)が含まれる(111)。  出産可能な年齢の女性、ティーンエイジ(13〜19歳)の少女、妊娠中の女性、乳幼児においては、鉄の必要性が最も高く、したがって欠乏のリスクが高い。それに加えて、長距離ランナーやベジタリアンの選手、多量の血液を月経で喪失する女性選手、また過剰な制酸薬を服用し、あるいはセリアック病(訳注:グルテンへの反応が起こる自己免疫疾患)のような何らかの消化器疾患のある人は、鉄欠乏性貧血を起こすリスクが高い(70)。  食品には、ヘム鉄と非ヘム鉄という2種類の鉄が含まれる。ヘモグロビンに由来するヘム鉄は、元々ヘモグロビンやミオグロビンを含む食品──肉や魚、家禽類といった動物性食品──にみられる。ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収がよく、その吸収はほかに食べた物の影響を受けない。私たちは、摂取したヘム鉄のうち約15〜35%を吸収する(111)。  非ヘム鉄は、野菜や穀物、鉄強化朝食シリアルといった非動物性食品に含まれる鉄の形態である。非ヘム鉄は、2〜20%のみが吸収される(165)。また、ヘム鉄は同時に摂取した食品に含まれる化合物の影響を受けないが、非ヘム鉄の吸収には多くの要因が影響を及ぼす。たとえば、ホウレンソウに含まれる非ヘム鉄は、フィチン酸と呼ばれる物質(植物のリンの貯蔵の形態)と結合している。フィチン酸は、非ヘム鉄の吸収を低下させる。それに加えて、ほかの物質の中には、非ヘム鉄の吸収を低下させることがあり、それにはタンニン(茶やワインにみられる)、カルシウム(乳製品やマルチビタミンにみられる)、ポリフェノール、フィチン酸塩(マメ科植物や全粒粉にみられる)、ダイズ中のタンパク質のいくつかが含まれる。ビタミンCを豊富に含む食品や飲料を同時に摂取することで、あるいはヘム鉄を同時に摂取することで、非ヘム鉄の吸収を高めることができる。たとえば、ホウレンソウに肉を組み合わせることで、ホウレンソウからの鉄吸収が高まる(70, 165)。  鉄サプリメントには多くの形態がある。それぞれ量は異なっており、また生体利用能や胃障害といった副作用の可能性もさまざまである(103)。加えて、カルシウムやサプリメントのマグネシウムは、鉄吸収に干渉するかもしれない(179)。多くの米国人は、十分なカルシウムやマグネシウムを食事のみから吸収していない。鉄の摂取および吸収には、選手がほかのミネラルを適切な量を摂取していないといった多くの要因が影響を及ぼすため、鉄サプリメントを勧めたり、吸収を最大化し胃障害を最小化するうえで鉄サプリメントをどのように摂取するかを伝えるのは、医師または登録栄養士のみが行うべきである(24, 47, 114, 144, 179)。 カルシウム  子どもの時期から青年期を通した適切なカルシウム摂取は、強い骨を発達させるうえで必要不可欠である。カルシウムは、青年期の間、骨の長さおよび密度の成長を助け、ピーク骨密度の90%までが青年期後期に起こる(58, 154)。成人においては、カルシウムは骨密度を維持するのを助ける。食事中のカルシウム摂取が不足した場合、身体の需要に見合うよう、また血液や筋、細胞内液における濃度を一定にするために骨の貯蔵からカルシウムが引き出される。カルシウムはピーク骨量を得るうえで不可欠であり、カルシウム不足はピーク骨量の獲得を阻害し、後々の人生で骨折のリスクを高める(71)。またカルシウムは歯の強さを保ち、筋収縮を調節するのを助け、神経機能や血管の拡張・収縮、ホルモンや酵素の分泌において役割を果たしている(71)。  米国国民健康栄養調査(NHANES)では、食事のみから目安量(AI)のカルシウムを摂取できているのは、9〜13歳の女性では15%、14〜18歳および51歳以上の女性の10%未満であることがわかった(9)。したがって、競技選手には、乳製品やほかのカルシウムの豊富な食品を食事で摂るように勧めるべきである。カルシウムの必要量に対して食事のみでは見合わない場合、選手の医師または登録栄養士はカルシウムのサプリメントを勧めることがある。   水分と電解質  身体の構成要素のうち水の占める割合は最も大きく、体重の45~70%である(68)。人体において水は、潤滑や衝撃吸収、建築材料、溶媒としての役割を果たす。加えて、水は、体温調整(汗を介した水分喪失は、とくに暑熱環境下においては運動中に皮膚を冷やすのに役立つ)や栄養運搬、老廃物の除去、水分バランスの維持、したがって正常な血圧の維持に不可欠である(78)。水分は最適な気温条件においてすら非常に重要であり、水なしでは数日しか生存することができない(99)。  すべての人にとって適切な水分補給を維持することが重要であるが、とくに運動選手は、自らの水分状態に十分に注意を払うべきである。なぜなら、汗による喪失が水分摂取を上回ることで急速に脱水状態が引き起こされ、続いて深部体温の上昇、血漿量の減少、心拍数の増加、主観的運動強度が高まる(31, 147)。これが起こると、水分が与えられない場合、発汗は深部体温の上昇に追いつかない。暑熱環境下で繰り返し運動を行うことは、身体が暑熱ストレスに適応すること(例:発汗量の増加、汗における電解質濃度の減少、発汗を開始する体温の低下)を手助けし、したがってシーズン開始時は、脱水や暑熱ストレスを起こしやすい傾向にある(50)。加えて、トレーニングをあまりしていない選手は、トレーニングを積んだ選手よりも熱ストレスを起こしやすい(45)。身体における水分保持に変化をもたらす生理学的な変化とともに加齢に関連した水分摂取の減少が起こり、高齢者においては、脱水や水分補給不足のリスクが高まる(45)。子どもにおいても、脱水のリスクはより高く、成人と比較して体重に対する体表面積が大きいため、また運動中の熱産生が増加し、汗を通じた熱の散逸は減少し、成人と比較して口渇感が低いといった結果、環境からの熱の入力の増加がもたらされる(12, 40)。それに加えて、鎌状赤血球生成傾向があったり、嚢胞性線維症その他の疾患がある場合、脱水となるリスクが増加する(12, 168)。体重の2〜3%減少という軽い脱水であっても、深部体温の上昇や、疲労の増加によるモチベーションや神経−筋の制御、正確性、パワー、筋力、筋持久力、全体的なパフォーマンスが低下することにより、競技パフォーマンスへの明らかな影響が生じる(13, 25, 37, 55, 81, 83, 112, 149, 158)。脱水により、深部体温の上昇や、1回拍出量および心拍出量の減少、血圧の低下、筋への血流低下、心拍数の増加、症候性労作性横紋筋融解症の悪化、熱中症や死亡のリスクの増加が起こり得る(31, 52, 109, 146)。脱水のリスクは、暑く湿度の高い環境や、高所において高まる(26, 109, 117)。 水分バランス  水の目安量(AI)は、男女それぞれ1日あたり3.7Lおよび2.7Lである。しかしながら、妊婦や授乳中の女性はそれぞれ1日あたり3.0Lおよび3.8Lである。水分の供給源には、コーヒーや茶、ジュース、ソーダといった飲料が含まれるほか、食べ物に含まれる水分も、水分の必要量を満たすのに寄与する(68)。  練習や試合中に水分バランスを維持することは、多くの選手にとって、とくに大量に発汗する選手、あるいは暑く湿度の高い、また高地環境で練習する場合に課題となり得る。環境的条件に加え、衣服、装備、身体の大きさは発汗率を増加させることがあり、頻繁なあるいは過剰な利尿剤および下剤といった安全でない減量の練習は、脱水のリスクを高めることがある(31, 34)。アメリカンフットボール選手、とくにラインマンは脱水になるリスクが高い。これは防具によるためと、多くの場合で身体が大きいことに由来する(31)。たとえば、NFL(National Football League)の選手における研究では、バックスとレシーバーの平均体重は93±6kgであり、1時間あたり平均して1.4±0.45Lの発汗があるが、ラインマンでは、平均体重が135.6±17kgであり、1時間あたり平均して2.25±0.68Lの発汗がある。両群における、4.5時間の二部練習(1日に2回の練習)でのバックスとレシーバーにおいて、6.4±2.0Lであり、ラインマンでは10.1±3.1Lであった(51)。ホッケー選手においては衣服を重ね着することと、防具を着用することにより、発汗と脱水のリスクが高まることに寄与する(14)。また意図的な脱水やその他の安全でない減量練習により、レスリング選手において脱水のリスクが高くなる(52, 181)。加えて、汗を通じた非常に広範囲の水分喪失の存在に注意することが需要である。たとえば、NBA(National Basketball Association)の選手は、40分の試合の平均プレー時間の21±8分において1.0〜4.6L、平均2.2±0.8Lの発汗が起こる(120)。座業中心の人は、呼吸および発汗の組み合わせにより、1時間あたり約0.3Lの水分を失う(148)。 脱水の予防  脱水に伴う負の影響があることから、選手は体重の2%を超える水分量の喪失を予防することに務める必要があるとともに、発汗を通じて喪失する電解質の補充にも務める必要がある(146, 147)。脱水予防の第一段階は、水分状態を評価することである(表9.10)。尿比重(USG)は使いやすく、測定機器が安価で持ち運びできるため、水分状態を評価するのに用いられることがある(178)。しかしながら、尿比重は水分状態の急激な変化に対して感度の高い指標ではなく、慢性的な水分状態の測定としてより優れたものである(120, 133)。水分状態を推測する、素早く簡単な方法には、ワークアウト前後の体重の変化を測定することが含まれる。選手は、軽い衣服を着用し、身体を拭いて排尿を済ませ、最も軽い状態での体重を、ワークアウトの直前および直後に自分で測定するべきである。汗を含んだ着衣は、体重測定前に脱ぐべきである。練習中の体重の0.45kg(1ポンド)の減少は0.5L(1パイント、16オンス、473ml)の水分に相当する。体重が2%以上減少していると、汗として失われた水分が十分に補充されていないことを示す(146)。1回のワークアウトによる急性の脱水を特定するのに加え、長期にわたって体重の変化を評価することは、慢性的な脱水状態の選手──数日にわたって数kgの体重減少が起こる──を特定する上で助けとなる(22)。  適切に水分補給していない選手を特定するのに加え、運動前後と、高強度運動の1時間後における体重測定、また摂取した水分量、産生された尿量を測定することによって発汗率を算出することもでき、これから運動中の水分の必要性についてよりよい考えを得ることができる。発汗率は、(運動前の体重)ー(運動後の体重)+(運動中の水分摂取量)ー(産生された尿量)に等しい(14, 22)。脱水後に水分補給した直後に尿比重あるいは尿量を通して尿の量を評価することは、誤解を招くかもしれない。選手が大量の低張液を摂取したとき、彼らは適切に水分補給されるまで、多量の尿を産生する(156)。  体重の変化をモニターすることに加え、選手は尿の色をチェックするようにアドバイスされることが時々ある。しかしながら、尿の色と水分状態の関係は非常に主観的である(68, 109, 146)。また、ビーツ(テンサイ)やブラックベリー、ある種の食品の色や服薬により、尿の色はピンクや赤、明るい茶色となることがある(49)。加えて、ビタミンB類やカロテノイド(ベータカロテンなど)、薬のいくつかによって、尿の色が濃い黄色や明るい黄色、オレンジへと変わることがあり、人工着色料(スポーツドリンクに含まれることもある)によって、尿の色は青や緑へと変わることもある(178)。  >スポーツ選手において、発汗の形での水分喪失の幅は非常に広い。したがって、各選手は個別化された水分補給の計画を立てるべきである。 電解質  発汗によって失われる代表的な電解質は塩化ナトリウムであり、これより量は少ないが、順にカリウムやマグネシウム、カルシウムも失われる(88)。ナトリウムは、より多くの水分摂取を促すことで、水分の調整に影響を及ぼす(108)。それに加えて、すべての電解質は汗を通して失われ、筋収縮や神経伝導に必須である。したがって、体液中の電解質バランスの乱れは、パフォーマンスの阻害につながることがある。発汗を通じたナトリウム喪失は選手によって大きく異なり、濃度は0.2g/L(10mEq/L)から12.5g/L(544mEq/L)以上という範囲にわたって報告されている(31, 146)。選手は発汗を通じて大量のナトリウムを喪失すると、その喪失を補うために意識的に高ナトリウム食品を選んだり、食事に塩を加えたり、スポーツドリンクに電解質を加えるという決断をする必要があるかもしれない。高強度な運動を行ったり、何時間も運動し水のみあるいは低ナトリウム飲料を過剰に摂取する選手は、血中ナトリウム濃度が危険なほど低いレベル──130mmol/L──まで低下するかもしれない。この状態は低ナトリウム血症と呼ばれる。これは細胞内膨張を引き起こし、血中ナトリウム濃度が125mmol/Lよりも低下すると、頭痛や吐き気、嘔吐、筋痙攣、手足のむくみ、不穏状態、見当識障害を引き起こす。血中ナトリウム濃度が120mmol/Lよりも低下すると、脳浮腫や痙攣発作、昏睡、脳幹ヘルニア、呼吸停止のリスクが高まり、死亡リスクの上昇が引き起こされる(4, 6, 146)。低ナトリウム血症を避けるために、水分摂取は発汗による喪失を超えるべきでなく(トレーニングセッションの終了時の体重が、開始時よりも増加しているべきでない)、スポーツドリンクや食事を通じてナトリウムを摂取すべきである(120, 146)。  汗によるカリウム喪失を補充するため、スポーツドリンクには少量のカリウムが含まれている。しかしながら、それらはカリウム摂取の総量に対して顕著に寄与しない。そして、米国の成人においてカリウムの摂取量を満たしているのは2%未満であるという研究があることから(29)、選手はトマトや柑橘類(シトラスフルーツ)、メロン、ジャガイモ、バナナ、牛乳といったカリウムを多く含む食品を食事で摂取することを注力すべきである。  >高強度な運動を行ったり、何時間も運動し水のみあるいは低ナトリウム飲料を過剰に摂取する選手は、血中ナトリウム濃度が危険なほど低いレベルまで低下するかもしれない。 水分摂取のガイドライン  理想的には、選手は運動あるいはトレーニングを水分が補給された状態で始めるべきであり、運動中に体重が2%以上減少すること(発汗による喪失)を避け、次のトレーニングセッションまでに完全に水分補給を行うべきである。完全に水分を再補充するのに必要な水分量は、次のトレーニングまでの時間によって決まる。しかしながら、練習や試合を脱水状態で始めた選手の中には、エクササイズセッション中に十分な水分を摂取して運動前の不足した水分状態を埋め合わせるのが難しい者もいることが、研究によって示されている(120, 138)。それに加えて、選手の自発的な飲水では、発汗による顕著な水分喪失を取り戻したり、練習や試合中の脱水を防ぐには十分ではないだろう。この理由により、また発汗の激しい選手において、また暑熱環境条件において強度の高い練習をする選手において、のどの渇き(口渇感)は、水分の必要性についての信頼できる指標とならないため、水分補給には体系的なアプローチが必要となる(22)。水分および電解質のガイドラインはできるだけ個別化されるべきであるが、水分や電解質の喪失は選手によって大きく異なり、次に示す一般的なガイドラインは、発汗率に基づいて特異的な推奨量が決まるまでのよい出発点となるだろう(7)。加えて、ストレングスコーチは、選手たちが飲む時間が適切となることを、また冷たい(10〜15℃)飲料にアクセスできることを確実なものとなるようにすべきである(80)。 [原著p.198 box]ひと目でわかる、水分摂取のガイドライン 練習前  ・選手の尿比重(USG)は1.02未満であるべき。もし必要であれば、運動の数時間前に水分の吸収と尿の排出ができるよう、事前に水分摂取すべきである(146)。 トレーニングセッション中 子どもと青年  ・体重が40kgの子どもは、冷たくした水あるいは味がついて塩が加えられた飲料を練習中20分おきに150ml飲むべきである。  ・体重が60kgの青年は、冷たくした水あるいは味がついて塩が加えられた飲料を練習中20分おきに250ml飲むべきである(30, 182)。 成人  ・各選手は個別化された水分補給の計画に従うべきである。暑い中で長期時間にわたって活動を行う際には、1Lあたり20〜30mEqのナトリウム(460〜690mgの塩化物をアニオンとして含む)を、また1Lあたり2〜5mEq(78〜195mg)のカリウムを含み、そして炭水化物濃度は5〜10%であるスポーツドリンクを摂取すべきである。 練習後  ・選手らは、水分を補充するために、適切な飲食物とともにナトリウムを摂取すべきである。もし脱水が顕著である場合、あるいは次の運動までの時間が短い場合(12時間未満)、より積極的なアプローチが正当化され、体重減少1kgあたり約1.5L(50オンス)の水分(十分な電解質を含む)を摂取すべきである。 身体活動の前  もし必要であれば、運動の数時間前に水分の吸収と尿の排出ができるよう、事前に水分摂取する(146)。 身体活動中  発汗率や電解質濃度に大きなばらつきがあるため、選手は特定の気象条件における練習や試合中の体重の変化を測定すべきであり、この情報に基づいて個別化された水分補給ストラテジー(戦略)を立てるべきである(146)。暑い中で長期時間にわたって活動を行う際には、IOMはスポーツドリンクに1Lあたり20〜30mEqのナトリウム(460〜690mgの塩化物をアニオン、すなわち陽イオンとして含む)を、また1Lあたり2〜5mEq(78〜195mg)のカリウムを含み、そして炭水化物濃度は5〜10%であることを推奨している(73)。加えて、選手が高強度運動や長時間にわたる運動中に、高い頻度でスポーツドリンクを摂取した場合、グルコースやフルクトース、マルトデキストリンといった異なる腸内輸送メカニズムを持つ複数の種類の炭水化物を含む飲料を選びたがるかもしれない。複数の種類の炭水化物を摂取することは、単一の種類の炭水化物を摂取するのと比較して、胃の通過速度がより速く、炭水化物の吸収や酸化がより大きく、パフォーマンスを高める可能性がある(33, 80)。すべての飲料は、冷たく(cool)して提供すべきである(10〜15℃)が、冷やし過ぎる(cold)べきではない(22)。  米国小児科学会は、子どもたちに定期的な水分摂取を推奨している。これらのガイドラインは、体重が40kgの子どもは、水または味がついて塩が加えられた飲料を練習中20分おきに148ml(5オンス)、また体重が60kgの青年は266ml(9オンス)を、たとえ喉の乾きを感じていなくても摂取することが示唆されている。その他の推奨では、塩化ナトリウムの濃度について15〜20mmol/L(2パイント=946mlにつき1g)とするものであり、これにより自発的な水分補給が味のない水と比較して90%増加したことが示されている(30, 182)。 身体活動後  身体活動後、選手は失われた水分と電解質を補充すべきである。もし時間に余裕があるならば、通常の食事や軽食(いくらかのナトリウムを含むものが提供される)、飲料により、失われた水分と電解質が補充される。汗による大幅なナトリウム喪失がある場合、食べ物に塩を加えることもできる(68, 146)。もし脱水が顕著である場合、あるいは次の運動までリカバリーの時間が短い場合(12時間未満)、より積極的なアプローチが正当化される。すなわち、選手は体重減少1kgあたり約1.5L(50オンス)の水分(十分な電解質を含む)を摂取すべきである。この量の水分は、大量の水分摂取に由来する尿産生の増加要因となるのを手助けする(146, 155)。 まとめ  栄養は、ストレングス&コンディショニングにおいて重要な役割を果たしている。十分な水分補給、適切なエネルギー摂取、十分なタンパク質・炭水化物・脂肪・ビタミン・ミネラルの摂取によって、トレーニングから最大の恩恵を得ることができる。栄養の原理についての一般的な理解と適用は、ストレングス&コンディショニング専門職にとって必須であり、それらは選手が栄養についての誤った情報を識別するのを助け、また選手が食事を改善するのに用いることのできる完全なガイドラインを提供するうえで助けとなる。 重要語句  許容主要栄養素分布範囲(AMDR;Acceptable Macronutrient Distribution Range)  目安量(AI;Adequate Intake)  アミノ酸(amino acids)  貧血(anemia)  生物学的利用能(bioavailability)  炭水化物、糖質(carbohydrate)  コレステロール(cholesterol)  脱水(dehydration)  食事摂取基準(DRIs: Dietary Reference Intakes)  二糖類(disaccharides)  ドコサヘキサエン酸(DHA: docosahexaenoic acid)  エイコサペンタエン酸(EPA: eicosapentaenoic acid)  電解質(electrolytes)  推定平均必要量(EAR;Estimated Average Requirement)  脂質(fat)  脂肪酸(fatty acids)  食物繊維(fiber)  フルクトース(fructose)  ガラクトース(galactose)  糖新生(gluconeogenesis)  グリセミック指数(GI: glycemic index)  グリセミック負荷(glycemic load)  グリコーゲン(glycogen)  グリコーゲン合成(glycogenesis)  グルコース(glucose)  高密度リポタンパク質(HDL;high-density lipoprotein)  水分補給(hydration)  水分補給不足(hypohydration)  低ナトリウム血症(hyponatremia)  ラクトース(lactose)  高密度リポタンパク質(LDL;low-density lipoprotein)  主要栄養素(macronutrient)  マルトース(maltose)  微量栄養素(micronutrient)  ミネラル(minerals)  単糖類(monosaccharides)  一価不飽和(monounsaturated)  筋タンパク質合成(muscle protein synthesis)  マイプレート(MyPlate)  栄養素密度(nutrient density)  オメガ3脂肪酸αリノレン酸(omega-3 fatty acid alpha-linolenic acid[ALA])  ポリペプチド(polypeptide)  多糖類(polysaccharides)  多価不飽和(polyunsaturated)  タンパク質(protein)  タンパク質の消化のしやすさ(protein digestibility)  タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS;protein digestibility correct amino acid score)  推奨栄養摂取量(RDA;Recommended Dietary Allowance)  飽和(saturated)  スポーツ栄養士(sports dietitian)  スクロース、ショ糖(sucrose)  許容上限量(UL;Tolerable Upper Intake Level)  トリグリセリド(triglycerides)  超低密度リポタンパク質(VLDL;very low-density lipoproteins)  ビタミン(vitamins) 例題  1. 適切なグリコーゲン貯蔵を維持することは、  a. タンパク質がエネルギー源として使われるのを温存する  b. 最大パワーを改善する  c. 持久的パフォーマンスを低下させる  d. 選手が体重を増やす(増量する)のを手助けする  2. 競技選手がタンパク質摂取量を増加させる必要性についての理由を、最もよく説明しているのは次のどれか?  a. 有酸素性運動におけるタンパク質酸化の減少  b. 組織の修復のための必要量増加  c. 体重を落とすためのカロリー制限  d. 摂取されたタンパク質の質  3.以下のうち、疲労やパフォーマンス低下に最も寄与すると思われるのはどれか。  a. タンパク質摂取が低いこと  b. 鉄不足  c. カルシウム摂取が低いこと  d. オメガ3脂肪酸不足  4. 好ましくない高レベルの血中脂質を低下させるうえで、以下のどれが勧められるか。  a. 複合炭水化物の摂取を減少させる  b. 飽和脂肪酸の摂取を、総カロリーの30%に制限する  c. 食事によるコレステロールを1日あたり最低500mg摂取する  d. 飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸あるいは多価不飽和脂肪酸へと置き換える  5. 以下のうち、すべての必須アミノ酸を認識できる量含んでいないタンパク質源はどれか。  a. 家禽類(鶏肉など)  b. 卵  c. レンズ豆  d. 牛肉